100万人の心の緑化作戦
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名言紹介


【名句027】言志四録より
鱗介の族は水を以て虚と為して、水の実たるを知らず
【意】 魚介類は常に水の中に居るので水を意識しない。だから水の有難さにも気づかない。
【解】  二十三才の時に五年勤めた銀行を退職しました。辞める決断ができてしまうと、わずらわしい仕事から一日でも早く離れたいと思うようになりました。念願かなって自由の身になり、退職した翌日に寮を出て、帰省のために最寄りの駅に向かったのです。駅には一人の乞食の人がいて、空き缶を前に憐れみを乞い地面に座っていました。私はこの姿を見てハッとしたのです。なぜなら、銀行員として名刺一枚でお客様から多額のお金を預からせて頂いたのは、自分の能力でなく勤務先の銀行の信用と同僚六千名のお陰です。肩書きがなければ乞食の人よりも生活能力が低いことを思い知らされ、現在の自分の非力さと今までの恵まれていた環境に気づかなかった浅はかさを恥じました。
 辞める数日前に郷里の父に連絡し、六か月の失業保険手当を利用して税理士の勉強をする旨を伝えました。すると父は電話の向こうで怒鳴ったのです。一人前の若者が自ら職を辞すにもかかわらず、失業手当を当てにするようでは情けない・・。
 後の真剣な受験生活を過ごせたのは、この二人のお陰です。


【名句028】言志四録より
人主の学は、知仁勇の三字に在り
【意】 上に立つ者の学問は、知仁勇の三字である。
【解】  論語の有名な言葉に「知者は惑わず。仁者はうれ憂えず。勇者はおそ懼れず」とあります。理に通じている知者はあれこれ迷うことがなく、欲のない仁者はくよくよ心配することがなく、きもっ肝たま玉が座っている勇者はびくびく恐れることがない。
 このように説かれても、日々の生活の中で大いに迷い、心配し、恐れている自分をつぶさに観察すると、理想的な賢者と大きく懸け離れていることを思い知るのです。しかし自信を無くす必要はありません。古代の仏教経典に「愚者が『私は愚かだ』と知れば賢者である」と説かれています。
 賢者愚者のランクも相対的なものです。この言葉の裏にはもう一段下の層が居ることを暗示しています。それは「自分を賢者と誤認する愚者」です。いつの時代にもこの種の愚者が多いので、その反語として経典の言葉であるのです。大切なのは、賢者の問題を自分と懸け離れたものと考えないことです。賢者も元は愚者であり、多くの愚者が生活を工夫し自分を高めて賢者になったのです。この工夫を『志』といい、志さえあれば愚者にも知仁勇が備わるはずです。


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