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【名句053】貞観政要より | |
【意】 | 私に良からぬ行為が有れば、必ず記録に留めるか。 |
【解】 |
史官とは、王朝の歴史書を作るために帝の全言行を記録する役人をいいます。ある時、帝である太宗が、掲句に続いて史官に日頃の記録を見せよと命じ、その理由を「我が得失を観て、もって自らの警戒とするのみ」と続けました。自分の長所短所を観て自分の戒めにしたいというのです。 これに対し史官は「史官は人君の言行を記す。善悪悉く書し、人主の非法を為さざらんことを請い願う。帝王の身、自ら史を観るを聞かず」と答えました。史官の職務は帝の言行を記録すること。だから善悪にかかわらず全諸行を書き留めるので、法に外れる行為をしないで欲しいと閲覧を拒絶したのです。 一歩間違えば命を失う状況ですが、融通の利かない唐変木というのではなく、命を賭け史官として史書を守ったのです。この辺りに中国民族の国家観である中華意識と、史官の自尊心の高さが伺えます。世界に誇る三千年の中国史の文化を、このような人々が守り通してきたのです。 |
【名句054】宋名臣言行録より | |
【意】 | (悪口を言った者の名前を)わざわざ知る必要も無い。知ったからといって何の得があろうか。 |
【解】 |
後に宰相に取り上げられた呂蒙正が参知政事であった頃、簾の影から悪口が聞こえました。同席していた同僚が悪口を言った者の官位姓名を問い正そうとした時、呂蒙正が発した言葉です。「一言、その器量を現わす」(巌海)といいますが、この一言で彼の品性器量が伺えます。 悪口を言う側を戒める名言は多くありますが、言われた側の対処を説く言葉はあまりありません。次の文章は菊池寛が作品を通し自分の道徳観を述べたものですが、穏やかな人柄が偲ばれます。 「あなたのことを誰かが、こうこう云ったといって告げ口する場合、私はたいてい聞き流す。人は陰では誰の悪口でも云うし、悪口を云いながら、心では尊敬している場合もあり、その云った悪口だけがこちらへ伝えられて、それと同時に云ったほめ言葉の伝えられない場合だって非常に多いのだから・・」 |
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